本田技研工業の創業者・本田宗一郎は、失敗や挑戦、仕事について数多くの言葉を残しています。
ところが、インターネット上で本田宗一郎の名言として紹介されている言葉の中には、いつ、どこで語られたのか分からないものもあります。
そこでこの記事では、Honda公式資料で確認できる言葉と、本田技研工業が発行した『TOP・TALKS―先見の知恵』の収録文として公開されている言葉を中心に紹介します。
最初に15の名言を一覧でまとめ、その後に言葉が生まれた背景と意味を詳しく見ていきます。
本田宗一郎の名言・格言15選【一覧】
- 成功を支える99%の失敗
- 同じ原因の失敗を繰り返さない
- 困難なときに生まれる知恵
- 少しずつでも日々前進する
- 見る・聞く以上に、実際に試す
- 日本一を目指すなら世界一を目指す
- アイデアと努力で世界と勝負する
- 知識を考え、行動へ移す
- 会社ではなく、まず自分のために働く
- 製品は嘘をつけない
- 120%の良品を目指す
- やってみなければ分からない
- 技術と知恵こそ本当の財産
- 作る人・売る人・買う人の「三つの喜び」
- 人の喜びを自分の喜びにする
本田宗一郎とは
本田宗一郎は1906年に生まれ、15歳で東京の自動車修理工場「アート商会」に入りました。
その後、修理業やピストンリングの製造を経験し、1948年に本田技研工業を設立します。
小さなオートバイメーカーだった頃から世界一を目指し、マン島TTレースやF1へ挑戦。さらに、低公害エンジン「CVCC」を生み出すなど、Hondaを世界的なメーカーへ成長させました。
その歩みは、最初から順調だったわけではありません。
ピストンリングの開発では失敗を重ね、レースでも世界との差を思い知らされました。それでも失敗の原因を考え、次の挑戦へつなげています。
本田宗一郎の言葉に「失敗」「挑戦」「行動」が何度も登場するのは、自身が失敗と試行錯誤を積み重ねてきたからなのでしょう。
失敗から学ぶ本田宗一郎の名言4選
1.成功は九十九パーセントの失敗に支えられた一パーセントだ
成功は九十九パーセントの失敗に支えられた一パーセントだ
出典:1973年4月「スズカ弘報」掲載「同じ失敗をくりかえすな」
この言葉は、低公害エンジン「CVCC」の開発について語ったものです。
完成した結果だけを見れば、CVCCは大きな成功です。しかし、その陰には数え切れないほどの失敗がありました。
本田宗一郎が伝えたかったのは、失敗した数が多ければよいということではありません。
なぜ失敗したのかを追究し、次の方法を考える。その積み重ねによって、初めて失敗が成功を支える経験に変わります。
結果が出ない時期だけを切り取ると、自分は前へ進めていないように感じることがあります。それでも、原因を考えながら続けているなら、その時間は成功から切り離されたものではありません。
2.失敗はしてもよい。だが、同じ原因で失敗しない
失敗はしてもよい。だが、二度と同じ原因で失敗しないようにしなければいけないね。
出典:1965年7月「やまと弘報」掲載「失敗の教えるもの」
本田宗一郎は若い社員に対し、思い切って仕事へ取り組むように語っています。
挑戦すれば、失敗を完全に避けることはできません。大切なのは、失敗をそのまま終わらせないことです。
一度目の失敗から原因を学ばなければ、二度目も同じところでつまずきます。反対に、原因を理解して方法を変えれば、たとえ再び失敗しても新しい学びが残ります。
「失敗を恐れなくてよい」という言葉だけを受け取るのではなく、「反省して次へ生かす責任まで含まれている」と読むことが大切です。
3.困った時、苦しい時の知恵が尊い
困った時、苦しい時の知恵が尊い。
出典:1964年7月「社報」掲載「新しいアイデアを期待する」/Honda Magazine「挑戦する心」
余裕のあるときには、これまでと同じ方法を選びやすいものです。
しかし、今のやり方では解決できない状況に追い込まれると、新しい方法を考えなければなりません。
本田宗一郎は、苦しさそのものを美化しているのではなく、困難と向き合って考え抜いた経験が、その人の知恵になると語っています。
順調に進まない時間にも意味はあります。苦しい中で考えたことが、次の飛躍を支える土台になるからです。
参考:Honda Magazine「挑戦する心」、「新しいアイデアを期待する」掲載文
4.少しずつでもよい、日々前進して欲しい
少しずつでもよい、日々前進して欲しい。
出典:Honda Magazine 2021 Spring Vol.6「挑戦する心」
大きな目標を前にすると、一度に大きく変わらなければ意味がないと思ってしまうことがあります。
しかし、一日で見ればわずかな前進でも、半年、一年と積み重なれば大きな差になります。
本田宗一郎はこの言葉に続けて、変化する時代の中では、立ち止まることが相対的な後退になるという趣旨を語っています。
完璧な一歩でなくても構いません。昨日より少し考えた、少し試した、少し改善した。その繰り返しが、遠くに見える目標へ近づく現実的な方法なのでしょう。
なお、今回確認したHonda公式ページには、この言葉の初出時期までは記載されていません。
失敗や困難の中で前を向く言葉をさらに読みたい方は、困難に立ち向かうときに読みたい名言集もあわせてご覧ください。
挑戦と行動についての本田宗一郎の名言4選
5.試したりということが、いちばん判断の資料になる
試したりということが、いちばん判断の資料になるんだね。
出典:1958年2月「社報」掲載「見たり聞いたり試したり」
本や人の話から知識を得ることは大切です。しかし、それだけでは本当にできるかどうかまでは分かりません。
本田宗一郎は「見たり」「聞いたり」「試したり」の中でも、自分で試した経験を重視しました。
実際に動けば、考えているだけでは見えなかった問題が現れます。失敗したとしても、どこを変えればよいのか具体的に考えられるようになります。
準備が整うまで待ち続けるのではなく、小さくても試してみる。その行動が、次の判断に必要な材料を与えてくれます。
6.日本一は世界一でなければならない
日本一は世界一でなければならない
出典:1973年4月「社報」掲載「アイデアは資本に優先する」
本田宗一郎は、国内だけを見て日本一を目指すのではなく、最初から世界を基準に考えました。
1954年には、世界最高峰とされたマン島TTレースへの出場を宣言します。実際に世界のレースを見たときには、技術力の差を痛感しました。
それでも挑戦をやめず、Hondaは1959年にマン島TTレースへ初出場。1961年には125cc・250ccの両クラスで上位を独占するまでに成長しました。
今いる場所だけを基準にすると、目標も現在の延長線上に収まりやすくなります。あえて高い基準を見ることで、今の自分に足りないものが明確になるのです。
参考:「アイデアは資本に優先する」掲載文、本田技研工業75年史
7.我われのアイデアと努力だけで世界と勝負できる
我われのアイデアと努力だけで世界と勝負できる
出典:1973年4月「社報」掲載「アイデアは資本に優先する」
この言葉は、厳しい排出ガス規制への対応とCVCCエンジンの開発を振り返った場面で語られました。
巨大な資本を持つ会社が相手でも、新しい規制への対応では同じスタートラインに立てる。本田宗一郎は、そこに勝負できる可能性を見いだします。
持っている資金や環境だけを比べれば、自分より恵まれた相手はいくらでもいます。
それでも、考えることと努力することまで奪われるわけではありません。条件の差だけを理由に諦めず、自分に使える力を探す姿勢が表れた言葉です。
8.知っていることより、考えてそれを行なうことに価値がある
知っていることより、考えてそれを行なうことに価値がある。
出典:1969年4月「社報」掲載「『知っている』だけでは価値がない」
知識を持つことと、その知識を使って何かを生み出すことは別です。
本田宗一郎は、新入社員に向けて、学校で学んだことを知っているだけでは会社への貢献にならないと伝えました。
知識は、考えるための材料です。そこから自分で判断し、行動へ移して初めて現実を変える力になります。
情報を集め続けるだけで止まっていないか。考えたことを、小さくても行動に移せているか。知ることが簡単になった今だからこそ、より重みを持つ言葉です。
仕事・ものづくりについての本田宗一郎の名言4選
9.自分のために働くことが絶対条件だ
自分のために働くことが絶対条件だ。
出典:1969年4月「社報」掲載「まず自分のために働け」
「自分のために働く」と聞くと、自分さえよければよいという意味にも見えます。
しかし、本田宗一郎が語ったのは、そのような利己的な働き方ではありません。
自分が成長し、仕事に喜びを持てるように働く。その働きが会社や周囲の人にもよい影響を与える状態を目指していました。
会社のために自分を犠牲にするのでもなく、自分だけが得をすればよいのでもない。自分と周囲の成長がつながる働き方を考えさせてくれます。
10.製品というものは決して嘘ができない
製品というものは決して嘘ができない。
出典:1957年3月「社報」掲載「製品にウソはない」
言葉では、実際よりよく見せることができます。しかし、完成した製品には、作った人や工場の考え方がそのまま表れます。
見えない部分まで丁寧に作ったのか。誰かの模倣で済ませたのか。使う人のことを考えたのか。
本田宗一郎は、ボルトやナット一つにも工場の特徴が表れると語りました。
これは製造業だけの話ではありません。文章でも、サービスでも、最後に相手へ届くものには、作る過程でどこまで向き合ったかが表れます。
11.百二十パーセントの良品を目指す
完成品はもちろん部品に至るまで百二十パーセントの良品を目指して努力している。
出典:1953年3月「ホンダ月報」掲載「百二十パーセントの良品」
なぜ100%ではなく、120%を目指すのでしょうか。
本田宗一郎は、人が100%を目標にすると、現実にはわずかな不合格品が出る可能性があると考えました。すべてのお客様へ良品を届けるには、目標そのものをさらに高く置かなければならないという発想です。
作る側にとっては何千台の中の一台でも、購入した人にとっては、その一台がすべてです。
数字上は小さな失敗でも、それを受け取った一人にとっては100%の問題になる。仕事の向こう側にいる相手を忘れない、厳しい責任感が表れています。
12.やってみもせんでなにがわかる
やってみもせんでなにがわかる
出典:Honda公式「マイスタークラブ20周年」Honda OB・宮田卓英さんへのインタビュー
できない理由を考えるだけなら、実際に手を動かさなくてもできます。
しかし、試す前に出した結論は、想像の範囲を出ません。やってみて初めて、本当に難しい部分や、意外にできる部分が見えてきます。
この言葉は、Hondaで本田宗一郎と働いた宮田卓英さんが大切にしている言葉として、Honda公式サイトで紹介されています。
同ページには発言時期や初出媒体の記載がないため、他の社報掲載の言葉とは出典の性質が異なります。その点を踏まえても、本田宗一郎の行動を重んじる姿勢を端的に表した言葉です。
仕事への向き合い方を考えたい方は、仕事に悩んだときに読みたい名言集も参考にしてください。
人と社会を大切にする本田宗一郎の名言3選
13.技術と知恵こそが、金に替えられぬ大きな財産だ
技術と知恵こそが、金に替えられぬ大きな財産だ。
出典:1965年2月「社報」掲載「真の財産とは」
当時、Hondaは四輪事業で損をしたと報じられていました。
それに対して本田宗一郎は、物の価値はお金だけではないと語ります。新しい分野へ挑戦する中で社員が身につけた技術と知恵は、未来につながる財産だと考えたからです。
目の前の結果が赤字や失敗に見えても、その過程で得たものまでゼロになるわけではありません。
身につけた技術や考え方は、次の挑戦でも使えます。数字だけでは測れない成長に目を向けさせてくれる言葉です。
参考:「真の財産とは」掲載文
14.作って喜び、売って喜び、買って喜ぶ
作って喜び、売って喜び、買って喜ぶ。
出典:1951年12月「月報」掲載「三つの喜び」
これは、現在まで受け継がれているHondaの基本理念「三つの喜び」の原形です。
よい製品を生み出す「創る喜び」。価値のある製品を届ける「売る喜び」。そして、製品を手にしたお客様の「買う喜び」です。
1955年には藤澤武夫が、お客様の喜びを最初に置くべきだと社報で説明しました。現在のHondaでは「買う喜び・売る喜び・創る喜び」の順で示されています。
作る側だけが満足するのではなく、届ける人と受け取る人まで喜べるものを作る。仕事が誰の喜びにつながるのかを考える、Hondaの原点です。
15.その人の喜んでくれた姿を見ることが自分の喜びなんですね
その人の喜んでくれた姿を見ることが自分の喜びなんですね。
出典:Honda公式「受け継がれる思想」
戦後、本田宗一郎は、遠くまで買い出しに行く妻の負担を軽くしたいと考え、自転車用の補助エンジンを開発しました。
出発点にあったのは、会社を大きくすることではなく、目の前の人に喜んでもらいたいという思いです。
誰かの困りごとを解決し、その人が喜ぶ。その姿を見ることが、作った自分の喜びにもなる。
「三つの喜び」にもつながる、本田宗一郎のものづくりの原点が表れた言葉です。
人生や人との関わりについて考えたい方は、人生に迷ったときに読みたい名言集もあわせてご覧ください。
本田宗一郎の名言として広まっているが、出典を確認できなかった言葉
本田宗一郎の名言を調べると、次のような言葉も数多く紹介されています。
- 「チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ」
- 「私の最大の光栄は、一度も失敗しないことではなく、倒れるごとに起きるところにある」
- 「新しいことをやれば必ずしくじる。腹が立つ。だから寝る時間、食う時間を削って何度もやる」
しかし、今回確認したHonda公式資料と、公開されている『TOP・TALKS―先見の知恵』の掲載文からは、これらの言葉の初出を確認できませんでした。
本田宗一郎が絶対に語っていないと断定できる資料もありません。そのため、この記事の「出典を示せる15選」からは外しています。
有名な人物の言葉は、意味を要約した文章が本人の発言として広まったり、別人の言葉と混同されたりすることがあります。
心に響くかどうかと、本人が実際に語ったと確認できるかどうかは分けて考える必要があります。
本田宗一郎の名言に関するよくある質問
本田宗一郎の最も有名な名言は何ですか?
どの言葉が最も有名かを客観的に決めた資料はありません。
失敗に関する言葉では「成功は九十九パーセントの失敗に支えられた一パーセントだ」が知られています。また、Honda公式サイトでは「困った時、苦しい時の知恵が尊い」「その人の喜んでくれた姿を見ることが自分の喜びなんですね」などが紹介されています。
本田宗一郎は失敗について何と語っていますか?
本田宗一郎は、成功の陰には多くの失敗がある一方、同じ原因の失敗を繰り返してはいけないと語っています。
失敗を無条件に肯定したのではなく、原因を追究し、反省して次へ生かすことを重視していました。
「チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ」は本田宗一郎の名言ですか?
本田宗一郎の言葉として広く紹介されていますが、今回確認した資料では初出を確認できませんでした。
本人の発言だと断定できないため、この記事では出典を確認できた15の名言には含めていません。
この記事で紹介した名言の出典は何ですか?
Honda公式サイト、Honda Magazine、本田技研工業75年史を優先して参照しています。
そのほか、本田技研工業が1984年に発行した『TOP・TALKS―先見の知恵』の収録文として、社報や月報の掲載年月とともに公開されている文章を参照しました。
まとめ|本田宗一郎の名言は、失敗を行動へ変える言葉
本田宗一郎の名言をたどると、失敗を恐れず挑戦するだけでは不十分だと分かります。
失敗した原因を考える。
知識を行動に移す。
小さくても日々前進する。
そして、自分の仕事を誰かの喜びにつなげる。
これらの言葉は、特別な才能を持つ人だけに向けられたものではありません。仕事で壁にぶつかったときや、新しい一歩を踏み出せずにいるときにも、自分が次にできることを考えるきっかけになります。
大きな成功だけを見て焦るのではなく、今日の失敗から一つ学び、昨日より少しだけ前へ進む。
その積み重ねこそが、本田宗一郎の言葉から受け取れる、挑戦を続けるための現実的な姿勢ではないでしょうか。
出典について
- Honda公式「本田技研工業75年史」
- Honda Magazine「挑戦する心」
- Honda公式「受け継がれる思想」
- Honda公式「マイスタークラブ20周年」
- Honda Cafe「TOP TALKS 本田宗一郎」
Honda CafeはHondaの公式サイトではありません。同サイトは、掲載文の出典を本田技研工業発行『TOP・TALKS』と明記しています。本記事では社報・月報の掲載年月を確認する資料として参照し、Honda公式資料でも確認できる内容は公式資料を優先しました。

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