人と比べて焦ってしまう。失敗したことを、何度も思い返してしまう。ちゃんとしようと思うほど、毎日が窮屈になる。
そんな日に、少し違うものの見方をくれるのが、樹木希林さんの言葉です。
俳優として多くの作品に出演した樹木さんは、インタビューや日々の発言の中で、自分なりの暮らし方や仕事への向き合い方を語ってきました。力強く背中を押す言葉もあれば、少し肩の力を抜かせてくれる言葉もあります。
この記事では、本人インタビューや出版社の掲載資料で確認できる、樹木希林さんの名言・言葉を10個紹介します。 誰かから聞き伝えられた言葉はその経緯を、書籍からの抜粋は掲載元を添え、そこから日常で考えられることをまとめました。
今の自分に近いテーマから、気になる言葉を読んでみてください。
※引用は短い抜粋です。発言の背景と、この記事で加えた解釈を区別しています。映画で演じた役のセリフを、そのまま本人の人生観として扱ってはいません。
樹木希林の名言を、今の気持ちから探す
| こんな日に読みたい | 言葉のテーマ | 掲載項目 |
|---|---|---|
| 人と比べて、自分が小さく感じる | 比べることから少し離れる | 1、6 |
| 頑張り続けて、息切れしている | 力を抜きながら続ける | 2 |
| 失敗を思い出して、動けなくなる | 失敗したところから始める | 3 |
| 幸せになる条件ばかり数えてしまう | 自分で楽しみを見つける | 4 |
| 思いどおりにならないことがある | 今できる形を探してみる | 5 |
| 暮らしや持ち物に追われている | 身軽さと、ものを活かす工夫 | 7、8 |
| 仕事の面白さや、自分の歩みを考えたい | 工夫を見つけ、今を認める | 9、10 |
1.比べることから少し離れる
おごらず、他人と比べず、面白がって、平気に生きればいい
確認資料:文藝春秋「本の話」『一切なりゆき』心に響いたことばアンケート結果発表(2019年12月26日)
2018年9月30日の樹木さんの葬儀で、娘の内田也哉子さんがあいさつの中で紹介し、『一切なりゆき』にも収録された言葉です。
人と比べてしまうとき、見ているのは、相手の人生の一部だけかもしれません。うまくいった結果や楽しそうな写真は見えても、そこに至るまでの迷いや負担までは分かりません。
それでも、誰かの一場面と自分の毎日を比べて、足りないものばかりが気になってしまうことがあります。
この言葉には、競争から少し距離を置く姿勢と、目の前のことに興味を持つ姿勢が、一緒にあります。自分が上か下かを確かめる時間を、何が面白そうかと考える時間に少し戻してみる。そんな受け取り方ができます。
平気でいられない日もあるでしょう。その気持ちまで隠すのではなく、他人の評価に一日のすべてを預けなくていい。そう考えるきっかけにしたい言葉です。
2.力を抜きながら続ける
あんまり頑張らないで、でもへこたれないで。
確認資料:宝島社『樹木希林 120の遺言』の収録語を紹介する発表(2019年6月1日)。掲載された言葉の一部を抜粋。
頑張る気持ちを残したまま、力の入れ方を緩めてもいい。二つの呼びかけが並ぶことで、そんな読み方ができる言葉です。
何かを続けたいとき、毎回、精いっぱい取り組まなければと思うことがあります。昨日できた量が今日できないと、気持ちが足りないように感じることもあるでしょう。
けれど、疲れている日の自分に、元気だった日の量をそのまま求めると、続けること自体が重くなります。
今日は短い時間にする。手を広げず、一つだけにする。休んでから、また考える。そうやって、その日に使える力に合わせて形を変えることもできます。
へこたれてしまう日まで、失格にしなくていいはずです。今は立ち上がれなくても、少し余裕が戻ったときに、もう一度手を伸ばせるものを残しておく。そのくらいの距離で、目標と付き合える日もあります。
3.失敗したところから始める
失敗したらね、そこからスタートなの。
確認資料:宝島社『樹木希林 120の遺言』の収録語を紹介する発表(2019年6月1日)。掲載された言葉の一部を抜粋。
失敗すると、それまでやってきたことまで、全部無駄だったように感じることがあります。もっと早く気づけばよかった、あのとき別のやり方を選べばよかったと、頭の中でやり直し続けてしまうこともあります。
この言葉は、失敗が起きた場所を、次に考えるための出発点に置き直しています。
予定に無理があったのか。確かめることを一つ忘れていたのか。相手との認識が違っていたのか。自分はだめだという結論に急ぐ前に、何が起きたのかを分けて見る余地があります。
すぐに気持ちを切り替えられなくても、次に確かめたいことが一つ分かれば、それは残せます。同じ失敗を絶対にしないと大きく誓うより、次の一回で変えるところを具体的にするほうが、手を動かせる場合もあるでしょう。
失敗した事実は消せなくても、その先で何を選ぶかは、まだ考えられます。
4.自分で楽しみを見つける
自分で見つけるもの
確認資料:宝島社『樹木希林 120の遺言』の収録語を紹介する発表(2019年6月1日)。幸せについて述べた言葉の末尾を抜粋。
宝島社の掲載資料では、幸せを、いつもそこにあるものと考えるのではなく、自分で見つけるものと捉える言葉として紹介されています。
幸せについて考えるとき、将来手に入れたいものが浮かぶことがあります。安心できる収入、居心地のよい家、誰かとの関係。どれも、自分にとって大切な願いになりえます。
その一方で、望んでいるものがそろうまで、今日の楽しみまで待たせなくてもよいのかもしれません。
いつもよりゆっくりお茶を飲めた。気になっていた本を少し読めた。誰かと話して、気持ちが和らいだ。人には説明しにくい小さなことでも、自分にとって大切なら、見つけたものとして数えられます。
困っていることを、気の持ちようで片づける必要はありません。その問題と向き合いながらでも、少しほっとできる時間は大事にしていい。そんな余地を、この言葉から受け取れます。
5.今できる形を探してみる
不自由なまま、おもしろがっていく。
確認資料:本人インタビュー「難を受けてこそ人生よ 樹木希林さんに聞く不登校」(初出:不登校新聞400号、2014年12月15日発行/不登校オンライン再掲載)。発言の一部を抜粋。
樹木さんは、病気や年齢とともに生じる不自由さについて話す中で、この言葉を述べています。自分の変化を、どう受け止めて暮らしていくかという話です。
思いどおりにならない部分があると、それがなくなるまで何も始められないように感じることがあります。前と同じようにできない自分を、つい責めてしまうこともあるでしょう。
それでも、今の条件の中で選べる形はないかと考えることはできます。一度に済ませていたことを分ける。道具の使い方を変える。得意な人に手を借りる。以前とは違うやり方が、今の暮らしに合う場合もあります。
この言葉に重ねたいのは、どんな状況でも明るく振る舞うことではなく、自分を直すことだけに目を向けすぎない姿勢です。負担を減らし、助けを得ながら、自分が楽しめる部分も残しておく。そのための工夫を考える読み方ができます。
6.人との違いを、恥ずかしさだけで測らない
まわりと自分を比べて恥ずかしいだなんて思わない。
確認資料:本人インタビュー「難を受けてこそ人生よ 樹木希林さんに聞く不登校」(初出:不登校新聞400号、2014年12月15日発行/不登校オンライン再掲載)。発言の一部を抜粋。
同じインタビューで樹木さんが振り返ったのは、子どものころの水泳大会です。泳ぐのが苦手だった小学6年生の樹木さんは、年下の子たちと水中を歩く競争に出場し、一等賞になったことを誇らしく感じたと語っています。
周りと同じことができるかだけで自分を見ると、できない部分ばかりが残ってしまいます。せっかくできたことにも、このくらいで喜んではいけないと、条件をつけたくなることがあります。
年齢のわりに遅いのではないか。ほかの人には簡単なのではないか。そんな気持ちが浮かんでも、自分ができるようになったことまで、消してしまわなくてよいはずです。
前より落ち着いて話せた。知らなかったことが分かった。助けを求める言葉を出せた。その変化は、ほかの誰かの速さとは別に、自分の中に残ります。
樹木さんの思い出からは、周りに合わせて喜びを小さくしすぎない見方を考えられます。
人の目や評価が気になって疲れたときは、人間関係に疲れたときに読みたい名言も、今の気持ちに近いところから読んでみてください。
7.持ち物と暮らしを身軽にする
モノを持たない、買わないという生活は、いいですよ。
確認資料:文藝春秋「CREA WEB」モノを持たない買わない生活(2018年12月18日)。『一切なりゆき』からの掲載。記事に記された初出はPHPスペシャル「歳をとるのはおもしろい」(2015年7月)。
樹木さんは、譲ってもらった服や家具を、自分で工夫しながら使う暮らしを語っています。持ち物が少ないことで、部屋の手入れや掃除にかかる負担も減ると話しています。
ものは、持っているだけで終わりではありません。置く場所を決め、手入れをし、ときには片づける。そのための時間や気がかりも、一緒に増えていきます。
買ったときはうれしかったのに、使わないものを見るたび、きちんと活用しなければと思ってしまう。そうした小さな宿題が、部屋の中にたまることもあるでしょう。
自分が好きで使っているものまで、減らさなければという話にはしなくてよいはずです。何を持つと楽しいかに加えて、何が少ないと暮らしやすいかも考えてみる。樹木さんの言葉は、そんな選び方の参考になります。
8.ものが活きる場所を考える
どんな素材でもそれが光る場所に置いて活かしたい
確認資料:文藝春秋「CREA WEB」樹木希林の「始末」と「執着」(2018年12月31日)。『一切なりゆき』からの掲載。記事に記された初出はFRaU「この人の言葉は宝物だ!」(2002年8月)。
服やアクセサリー、インテリアについて話す中での言葉です。樹木さんは、ものの置き場所や身につけ方によって、活かされ方が変わると考えていました。
紹介された例の一つは、着物の生地を使った服です。そのまま着物にするのとは違い、柄がちらりと見える使い方をする。素材のよさが出る形を、自分で工夫しています。
ものを選ぶとき、単体で素敵に見えるかどうかに目が向きがちです。しかし、実際に置く場所や、手持ちの服との組み合わせによって、しっくりくるものは変わります。
今あるものでも、使う場所を変えたり、合わせ方を変えたりすると、見え方が違ってくるかもしれません。新しいものを探す前に、手元のものをもう一度眺めてみる。そんな楽しみを感じられる言葉です。
9.仕事の中の、小さな選択に目を向ける
役者って面白い仕事なのよ
確認資料:本人インタビュー「日々是上出来」/T JAPAN(2016年6月1日号掲載インタビューの再掲載)。
映画『海よりもまだ深く』に寄せたインタビューで、演じることについて話す中の一節です。樹木さんは、同じセリフでも、その奥にどんな気持ちがあるかによって表現が変わり、それを選ぶのが役者だと語っています。
決められた言葉があっても、そこに至る気持ちや伝え方には、役者が考える部分がある。その具体的な面白さを話した言葉です。
日々の仕事も、外から見れば同じ作業の繰り返しに見えることがあります。けれど、実際に取り組む人は、順番を調整したり、相手に伝わる言い方を探したり、細かな選択をしています。
その選択は、結果だけを見ていると、見過ごしやすいものです。少しやりやすくできたところ、前より工夫できたところを、自分で確かめる時間があってもよいでしょう。
余裕のあるときに、仕事の中で自分が考えている部分を見つめてみる。樹木さんが演技の面白さを語る言葉からは、そんな視点を受け取れます。
10.今の自分にも、丸をつける
私はいつも、今の状態を上出来だなって思ってる。
確認資料:本人インタビュー「日々是上出来」/T JAPAN(2016年6月1日号掲載インタビューの再掲載)。
映画の役のセリフと、自分自身の考えを分けて説明する中で、樹木さんが語った言葉です。今の自分の状態を、どう受け止めているのかが表れています。
こうなりたいと思っていた自分と、今の自分が違う。そんな気持ちを抱くことはあります。目標があるほど、まだ届いていない部分が目につくのかもしれません。
それでも、ここまでの日々には、うまくいかなかったことだけでなく、何とか過ごしてきた時間もあるはずです。できるようになったこと、選び直したこと、大切にしてきた関係もあります。
理想に届いたときまで、自分を認めることを待たなくてもよいのではないでしょうか。
変えたいところがある気持ちと、今の自分にも丸をつける気持ちは、一緒に持てます。今日できなかったことを思い出す前に、今日までやってきたことも一つ見る。そのきっかけとして、読み返したい言葉です。
映画のセリフと、樹木希林本人の考えを分けて読む
樹木さんの名言を探すときは、映画の登場人物のセリフと、本人がインタビューで語った言葉を区別しておきたいところです。
T JAPANのインタビューでは、『海よりもまだ深く』で演じた人物の、幸せと諦めについてのセリフに触れ、自分自身の考えと同じではないと説明しています。
俳優の声で聞いた言葉には、その人自身の思いが重なって感じられることもあります。それでも、誰が書いた言葉で、どの場面で語られたのかは確かめられます。
また、書籍に収録された言葉でも、すべてがその本の刊行時に発言されたものとは限りません。過去の取材やテレビでの発言、家族が伝えた言葉など、成り立ちは異なります。
短い言葉が気になったとき、その前後にも目を向けると、受け止め方が変わることがあります。樹木さんの言葉も、出典とともに読み返してみてください。
今の自分に合う言葉を、一つだけ持っておく
樹木希林さんの言葉には、人と比べることから離れたり、ものの見方を変えたり、今の自分を認めたりする手がかりがあります。
どの言葉にも同じようにうなずける必要はありません。今日は厳しく感じる一言もあれば、少し気持ちが緩む一言もあるでしょう。
人と比べて疲れた日は、いま自分が面白いと思えることを確かめる。失敗した日は、次に変えるところを一つ考える。暮らしが窮屈な日は、ものを増やす前に、今あるものを眺めてみる。
大きく生き方を変えなくても、そんな小さな見直しはできます。今の自分に合う言葉を一つ、心の片隅に置いてみてください。
自分らしい生き方について、ほかの人物の言葉も読みたい方には、岡本太郎の名言・格言も紹介しています。これからの生き方に迷う日に作品の言葉を探したい方は、人生に迷ったときに読みたい名言もあわせてどうぞ。


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