又吉直樹さんが好きな作品について話すときには、人の意見に触れることと、自分の感覚を残すことの両方が出てきます
読書の話には、眠くなったら本を閉じるという、身近な過ごし方もあります
この記事では、2023年の本人インタビューから5つの言葉を紹介します
人の評価や進路の選択、読書をめぐる回答を、何を聞かれて話したのかが分かる形でまとめました
※引用は回答の一部です
小説の登場人物のセリフと、又吉さん本人の発言は区別しています
又吉直樹の名言一覧|テーマと短い言葉から探す
| テーマ・解説 | 言葉の一部 |
|---|---|
| 1.好きという感覚を残す | 自分が良いと思ったものは良い |
| 2.これまでの努力と、次の選択 | 選択肢は一気に広がる |
| 3.自分のペースで本を読む | 本って「ラク」ですよ。 |
| 4.同じ作品との出会い直し | 感じ方はぜんぜんちがってくると思います。 |
| 5.自分の暮らしも視野に入れる | 自分で自分の存在を認めていなかった。 |
一覧は、回答から短い一部分を抜き出したものです
この後に、前後の文脈と出典を添えています
5つの言葉を、本人インタビューから読む
1.好きという感覚を残す|誰かと作品の評価が違うとき
自分が良いと思ったものは良い
東大新聞オンラインで、世間の評価にとらわれず、好きなものを好きでいるためにはどうすればよいかと聞かれたときの回答の一部です
質問では、エッセイ『月と散文』で書いたことにも触れています
又吉さんは、人に勧められて好きなものが広がることを、良いこととして話しています
そのうえで、勧める人や世間の評価に影響されすぎると、本来の自分の好みが見えなくなることを気にかけています
自分の好きな作品が酷評される場合もあれば、多くの人が絶賛していても、自分には分からない場合もある
どちらの場合にも、自分がどう感じたかを大切にしたいという答えです
作品を知る入口は誰かの勧めでも、それをどう感じたかは、自分の中にある
この回答は、作品を評価する話の中に、一人ひとりの好みを残しています
出典:東大新聞オンライン・又吉直樹さん本人インタビュー(2023年8月18日掲載)
2.これまでの努力と、次の選択|進路を考える人への回答
でも、それを無視できたら選択肢は一気に広がるのではないでしょうか。
同じインタビューで、受験や就職など、人生の分岐点にいる読者へのアドバイスを求められたときの言葉です
ここでの「それ」は、直前に話している、これまでにかけてきたコストを指しています
又吉さんは、東大に入った人には、その肩書きに対する周囲の目があることを挙げています
自分が同じ立場なら、入学までに努力した時間を無駄にしない選択をすると思う、とも話しています
積み重ねてきたものを、次の選択に生かそうとする気持ちを認めたうえで、別の基準で選ぶ可能性を問いかけているのです
これまでの努力を大切にすることと、その努力によって進む方向が決まり続けること
この二つは、近いようで少し違います
又吉さんの回答を読むと、過去の時間と、これからの選択をどう結び付けるかという問いが見えてきます
相手が背負っているものに触れてから、選択肢の話へ進む順序がある回答です
出典:東大新聞オンライン・人生の分岐点についての回答(2023年8月18日掲載)
3.自分のペースで本を読む|読書の身近な楽しみ方
その点、本って「ラク」ですよ。
「ほぼ日」のインタビューで、本の良さについて聞かれたときの言葉です
映画や演劇も好きだと話したあと、本の読み方の自由度へ話が移ります
又吉さんが挙げるのは、眠くなったら本を閉じ、自分のタイミングで続きを読めることです
一度手を止めても、物語の続きはページの中に残っています
この会話で又吉さんが最初に話す読書の魅力は、本そのものの面白さです
読み終えた達成感についても触れていますが、その手前に、楽しんで読む人としての感覚があります
どのくらい速く読んだか、何冊読んだかを問う話とは、時間の捉え方が違います
読むことを始めたり、いったん止めたりするタイミングが、読む人の側にある
「ラク」という短い表現から、その身近さが伝わります
本を通して物語に入り込む時間については、芦田愛菜さんの名言5選でも、本人が読書について答えた言葉を紹介しています
出典:ほぼ日・本人インタビュー第3回(2023年7月15日掲載)
4.同じ作品との出会い直し|読む時期で変わる感じ方
読む時期で、感じ方はぜんぜんちがってくると思います。
同じ連載の第5回では、聞き手が、中学生のころに読んで怖かった太宰治の『人間失格』について話しています
今読んだら別の感情を抱きそうだ、という話から生まれた回答です
又吉さんは、作品に向き合う時期には、読む人の体調や心の状態も含まれると説明しています
このあと、読書は書いた人と読む人の共同作業だ、という話へ進みます
本の文章が同じでも、それに向き合う人の側には、その時々の暮らしがあります
以前は気にならなかった登場人物の迷いや、短いやり取りが、別の時期には目に留まる
この言葉は、作品を読むという行為に、その人が過ごしてきた時間も関わっていることを考えさせます
名言として紹介されている一節も、物語のどこで、誰に向けて語られたのかをたどると、違う面が見えてくることがあります
同じ言葉に出会い直す面白さが、この会話にはあります
出典:ほぼ日・本人インタビュー第5回(2023年7月17日掲載)
5.自分の暮らしも視野に入れる|見落としていた存在への気づき
自分で自分の存在を認めていなかった。
連載の最終回で、又吉さんが若いころの暮らしを振り返っている場面の言葉です
物語を作るときに大切にしていることを聞かれ、格差や貧困への関心と、自分の経験について話しています
上京したころの又吉さんは、風呂のないアパートに暮らしていました
同世代の若者の就職事情を伝えるニュースを見たとき、自分よりお金がある人たちのことを気の毒に思ったといいます
そこで残ったのが、自分自身の暮らしはどうなのか、という問いです
ニュースに出てくる同世代の話を考えるとき、自分をその外側に置いていたことを振り返っています
ほかの人の状況を見ていた自分が、その中に自分の存在を含めていなかった、という具体的な経験の話です
誰かの大変さを考える視野の中に、自分が暮らしている現実も入っているか
その問いが残ります
又吉さんは、こうした若いころの経験が、創作にとって大きなものだとも語っています
作品を生む人の言葉として読むと、この回想の重みが伝わります
出典:ほぼ日・本人インタビュー第7回(2023年7月19日掲載)
好きなものを選び、自分の時間で向き合う
又吉さんの回答には、作品を勧められる楽しさ、周囲の目がある中で選ぶ難しさ、読む側が持つ時間の自由が出てきます
短い言葉の周りには、相手の質問と、それに答えるまでの話の流れがあります
好きだと感じたものに触れること
これまでの時間と、これからの選択を考えること
自分が置かれている場所も、視野に入れること
発言の背景まで読むと、自分で選ぶという言葉にも、いくつもの具体的な場面があることが分かります
自分の好みや、人との距離をめぐる物語の言葉は、スナフキンの名言5選でも、原作小説の場面とともに紹介しています


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